『閉鎖病棟』
帚木蓬生 著
新潮文庫
九州のとある精神病院を舞台にした小説。
"閉鎖病棟"というタイトルではあるが、完全に隔離された病院での出来事を描いているわけでもなかった。
主な登場人物たちがその病院へ来る事になったいきさつの物語と、その後の病院で起こった出来事が描かれている。
作者は精神科の医師だとあとがきで知り、納得。
なんていうか、精神病患者に対する偏見や差別は微塵も感じない文章だった。
精神病院を特別な場所としてとらえているのでなく、日常の連続の中にある病院の一つとして描いていて、"健常者"と"患者"、そういうとらえ方もしていないようだった。
"チュウさん"という年配の患者を中心に描かれていて、彼とよく行動を共にする人々の病院に来るまでのいきさつと、病棟での日常が淡々とつづられる。
このまま、終るのかな?と思いきや、物語終盤にして事件が…。
ミステリーといえば、事件が起こり、謎を解き、解決していくストーリーが一般的だが、
この小説は少し違う。
事件は起こる、が、終盤で、しかも犯人も動機も分かっている。
それでも、否、それだからこそ泣けた。
この小説の面白さは謎解きではない、ということ。
前半、時間の流れが分かりにくかった部分も有るが、後半になるにつれて物語に引き込まれた。
最後は電車にいながら泣いてしまった。
明るい話ではないが、真っ暗な話でもない。イメージとしては、8ミリフィルムで撮った映像のような小説だ。
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コメント
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それ前に読んだーーー号泣したようー(´o`)゜。゜゜
投稿: とま咲 | 2009年6月21日 (日) 01時11分
泣けるよね、最後まで読むと・・・。
最初は話がとぶ感じで誰が誰のエピソードが理解しにくかったりしたけど。確かに、これは凄い本だと思ったよ。
(新聞評か書店の広告欄で知って読んでみたのです。)
投稿: inuika | 2009年6月21日 (日) 09時44分