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『月と六ペンス』

W.Somerset Mougham 著 (中野好夫:訳)

新潮文庫

天才画家の半生を小説家の「僕」からの視点で描いたもの。

ストリックランドといういたって普通のイギリス人の男が

ある日突然妻子を残し、仕事も辞めて失踪する。

ストリックランド夫人の友人だった「僕」は、夫人に頼まれフランスに居るという彼の元へ。

彼は絵を描くためにこれまでの生活を辞め、フランスへ来たのだという。

しかし、彼の描く絵はとても上手いとは表現しがたいものであったため、

生活は食うか食わざるかといったものであった。

それでも、一向に気にせず、独りで自分の絵を描くストリックランドだったが

ある日、重い病に倒れる。

ストリックランドを盲目的に信奉する、一人の画家仲間が

半ば強引に自宅へ彼を運び、妻とともに献身的な看病を続けるが、

やがて病のいえたストリックランドはその画家の妻を奪い、

あげく彼女を自殺に追い込んだ末、行方をくらます…

ストリックランドの死後、彼が南国タヒチで生涯を閉じたと知った「僕」は、

「今」天才画家として注目されるようになったストリックランドの足跡を辿り

タヒチへ向かい、彼の最期を知る人々を訪ねる…

 ゴーギャンをモデルとした小説として有名な作品である。

だが、ゴーギャンそのものの物語ではない。

あくまでもゴーギャンの生涯から、インスピレーションを得た「小説」である。

前半の、ストリックランドが彼の世話になった友人の妻を自殺に追い込んだという辺りまでは

「僕」の経験談として語られるためか、「通俗小説」そのもの(?)だが、

「僕」がストリックランドを知る人々から聞いた話という形で書かれた後半は、

なんだか凄まじかった。

天才とはこういうものか、と思ってしまった。小説だってば。

こうなると、ついついゴーギャンの伝記的作品「ノアノア」も読んでみたくなった。

 

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