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『天を衝く』(全三巻)

高橋克彦著

講談社文庫

時は戦国。舞台は南部(東北地方)。

「北の鬼」と呼ばれた武将・九戸政実の話。

特に興味があったわけでもなく、ただ本棚にあり、

全三巻あるならば読みごたえもあるだろうと思って手に取った本だったが、

すっかり引き込まれてしまった。

九戸政実とは、豊臣軍二十万の軍勢にたった五千で挑んだ九戸党の棟梁として知られているらしい(私は知らなかったが)。

なぜ、政実がそんな無謀な戦いに出たのか、そうしなければいられなかった政実の姿を描くために1,2巻が費やされている。

九戸政実という武将がいかに優れた傑出した人物であったのか、

彼の率いる九戸党がどれだけ素晴らしい軍勢であったのか、

読んでいくうちにすっかり作者の同類と化してしまいそうな内容である。

歴史は一面では語れないもの。

実際、九戸政実という人物がどういうつもりで本家にたてつき、豊臣に対してと思われても仕方のないような戦を仕掛けたのかは分からないけれども、

こういう書き方をされてしまうと、もうすっかり九戸党の虜(笑)である。

最期がどうなるか、歴史小説は史実があるだけに分かってはいるのだけど、

前もって調べてみた史実とはちょっと違う、

潔い気持ちの良い(だけど哀しい)終わり方で、後味は悪くなかった。

とはいえ、やはりラストは泣けずには読めなかった。

戦国が舞台なだけに、合戦シーンも多く、血なまぐさい描写もあって読んでて辛くなったりもしたけど、

なんか、最後はもう「これが戦国武将の生き方か!」と開き直って読めた気がする。

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