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『陰陽師~酔月ノ巻』

夢枕獏著

文藝春秋

『陰陽師』シリーズ最新刊なのである。

陰陽師・安倍晴明と源博雅がほろほろと酒を飲みながら始まるあやかしの物語。

9編の短編が入っている。

私のお気に入りのシリーズで、ケチな私にしては珍しくすべてハードカバーで持っている。

というか、最初はハードカバーサイズしかなかったのだ。

それにしても、今回の「酔月ノ巻」は、これまでに比べてとても風雅な物語な印象。

これまでももちろん、平安京を舞台にした王朝文学の雰囲気はあったのだが、

少なからず艶っぽいというか官能的というか、もっとドロドロした愛憎的な印象が強い感じも受けたのだが、

最新刊に収められた9編は「色」が抑えられてて、とても風雅だと思った。

そして、晴明より、蘆屋道満が目立ってるな、と。

『陰陽師』シリーズではないが、文庫『翁』が出たときから

夢枕さんはきっと蘆屋道満がお気に入りなんじゃないかな?とは思っていたけど。

まあ、それにしても、季節感あふれる情景のなかで、ほろほろと酒を飲みながら語る晴明と博雅の関係がとても好きだ。

9編どれも良かったけれど、一押しは2話目の「桜闇、女の首」かな。

桜の舞い散る様子が美しいし、博雅の楽の音が聞こえてくるようだし、華やかな中にももの悲しさもそこはかとなく漂っていたという感じが良かった。

それから3話目の「首大臣」はどこかコミカルで面白かった。

秋の夜長にゆったりと読むにはぴったりな本かと。

…あ、もう冬?

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