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『闇の絵巻 上・下巻』

澤田 ふじ子著

光文社文庫

信長、秀吉など、時の権力者に重用された絵師・狩野永徳を中心とした狩野一派と

戦国末期に能登から京へ上り、台頭してきた長谷川久六(のちの等伯)。

戦国時代を舞台としながら、武将とはまた違う”戦国”を生きた絵師の物語。

絵師といえば、その技量で権力者の庇護の元、大作を描いていたのだと思っていた。

しかし、絵師と言えども、処世術が必要なんだな、と思わされた小説。

技術はもちろん、でもただ上手いだけでは世に出ることはできない。

コネクションがいかに大切か、

しかも戦国時代なだけに、庇護してくれた権力者が永遠と権力者であるとも限らない。

狩野派のような大きな一派ともなると、一個人の問題ではなく、

一派、一門として家名を残していかないといけないのである。

物語は、長谷川等伯が家族を伴って身一つで能登から、

狩野派全盛の京へ上ってくるところから始まるので、

どうしても長谷川一派を応援したくなる。

つい、ウィキで等伯を調べたら、等伯の長男・久蔵が等伯よりも先に逝ってしまうとあって

かなりショックな気分で下巻を読んだ。

天賦の才を持ち、父・等伯よりも偉大な絵師になるのではないかと思われたほどの人物。

狩野永徳が急逝し、長谷川一派の台頭がめざましくなってきても

久蔵は等伯よりも先に逝ってしまうんだ、と思うと悲しくて、

せめて雪姫との婚儀が済んだあとでありますように…なんて

読みながら祈りにも似た気分になった。

もちろん、小説。フィクション部分も多いとは分かってるのだけど

これ読むと、狩野派のイメージがちょっと悪くなるかも。

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