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『平の将門』

吉川 英治 著

講談社 吉川英治歴史時代文庫

相馬から関東一円を掌握し、”親皇”を名乗り、あっけなく散ってしまった人物である。

死してなお、怨霊と畏れられ、現在では江戸総鎮守として知られる神田明神の祭神。

なんとなく、名前は知っていたし、神田明神にはもう何度もお参りしているのに

将門という人物についてよく知らなかったので、一度関するものを読んでみたいと思っていたのだ。

『将門記』を読むべきかとも思ったのだけど、古典は読みづらいかな…、と思ったのと

見当たらなかったので、たまたま目に入った吉川英治作品を読んでみた。

吉川版将門は、かなり好意的に書いてあるのかな、と思った。

少年時代は、叔父たちにいいいように京都へ追い出され、

故郷へ戻れば、やはり領土争いが起こり、親分肌の性格から、慕われもするが

荒々しい戦い方で、敵も作る。

周りに勝手に持ち上げられて、結局心ならずも朝廷に歯向かった”朝敵”となってしまう。

純粋でお人好しで粗野で、感情的。

およそ、”怨霊”というイメージがつきにくい人物だと思うのだけど…。

そう、私はずっと不思議だったのだ。

なぜ、将門に関してこんなに”伝説”が多いのか。

怨霊となるには、裏切られたとか、濡れ衣の咎を着せられたとか、理不尽なことでもあったのかとも思ったのだが、

後の時代で、もっと口惜しい討ち死にをした戦国武将はいっぱいいたはず。

でも、なぜか怨霊といえば、道真公と将門公の印象が強い。

しかも、怨霊だったのに、今では江戸の守り神…。

江戸の…というのも何故だろう?彼は相馬の人だ。

もちろん、そっちの方にも所縁のある神社とかあるのだろうけれど。

結局、そういうことはよく分からなかった。

けど、平将門という人物はイメージしていた感じより、ずっと普通の、坂東武者だったのかな、と、この本を読んだ限りでは、そう思った。

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