『西巷説百物語』
京極 夏彦著
角川文庫
「巷説百物語」の主人公だった又市の同僚(友人?)、関西で仕事をする”靄船”の林蔵が主人公の物語。
人当たりが良くて、女受けもよい林蔵が、業を背負った人間を靄船に乗せて、
どうにもならない事をどうにか収めてしまう物語だ。
又市中心の巷説モノより良い意味で小さい、というか、人情ものというか…。
「前巷説~」でかなりグロい描写が多いな、と感じていたので、ちょっと不安だったけど、
この”西”版はそうでもなくて、読み易かった。
伏線が周到で、相変わらずよく出来たストーリー。
そこに至るまでの経緯、善人だと、努力の人だと思い読んでいた人間の、
その別の顔、本当の顔が林蔵の操る”靄船”の上であらわになる経緯が興味深かった。
ヒトの手で収まったとは思えない事柄も、後で”ネタばらし”がちゃんと書かれているので、そういうことだったのか…とすっきりできる。
何編か収録されているが、特に良かったなと思ったのが「豆狸」。
文庫の表紙のデザインにもなっている。
罪にならざる罪を問う、悪人成敗モノとは一線を画した、
それだけにきっと仕掛けも大変だったことだろう、と思う人情もの。
泣けた。
又市が仕掛けが決まった時に言うのは「御行し奉る―」だったけど、
林蔵の決まり文句は「これで終いの金比羅さんや―」。関西らしい?
舞台が関西なので、話し言葉は殆ど関西弁。
この関西弁のリズムが読んでいてなんだか小気味よかった。
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