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『都築道夫コレクション<ユーモア編> 悪意銀行』

都築 道夫 著

光文社文庫

 表向きはバーのオーナー、悪知恵働く土方利夫が始めたその名も「悪意銀行」(”悪意”を融資して金利を得ようという(?)銀行)に、

近々市長選挙が行われる地方都市の現市長を暗殺してほしいという依頼が入る。

その依頼を窓の外から盗み聞きしていたのが、

土方の相棒?悪友?パートナー?の近藤庸三。

この近藤という男、口も達者で腕もたつが、金に縁がなく、

現在落語家の弟子をしている変わり種。

土方の金儲けの話を盗み聞きして、

土方ばかりにうまい汁を吸わせてなるものか、この機に乗じて自分が稼ごうと、

一足先に地方都市へ乗り込もうとするものの、足がない。

落語を聞かせる約束で、運送トラックに乗せてもらいなんとか目的の地へ着いたはいいが、

土地勘のない場所でターゲットの住まいが分からない。

そうこうしているうちに、暗殺者と間違えられて荒っぽい連中に捕まってしまい…。

 読み始めは正直言って何が何だかさっぱり分からなかった。

土方と近藤の関係も、仕事とか目的とか、人物像もイマイチ一定しなくて入り込むまでに時間がかかった。

それもそのはず、このコンビ、「悪意銀行」の前にも作品があるらしく、

しかもその作品ではコンビではなくトリオものだったらしい。

あとがきみたいなものを読んで判明。

探偵稼業みたいなもので稼いでいるらしい土方と近藤だけど、

信頼し合った相棒という感じではない。

「ルパン三世」のルパンと峰不二子…というとちょっと違うか?

手を組んでると言えば組んでるけど、お互い自分の得になるんだったら、結構平気で裏切る。

こいつなら修羅場を切り抜けるだろう、と信頼してこそ、と言えなくもないけど。

う~ん、「シティハンター」のファルコンと獠みたいな関係?

市長選挙を巡って候補者やらその後援者やら、狙う暗殺者やら何やら、

色々な人物が入り乱れて理解するのが大変だったけど、

ストーリが呑み込めてくると面白くなった。

この近藤という男が、最初はどうしようもない男だと思っていたのだが、

なかなかどうして、口はたつし、腕もある。縄抜け籠脱け銃器凶器の扱いにも長けている。

で、なぜか出会う女すべてに言い寄られてしまうほど女にモテる。

ゲイの殺し屋や、はてはメス犬にまでなつかれる始末。

基本コメディータッチの書き方なので、軽い感じで読めるけど、

よくよく考えると結構派手にドンパチしてる場面も。

コメディチックなハードボイルド作品といった印象だった。

土方・近藤コンビの活躍?する物語が表題作のほか2編、

あとショート作品と艶っぽい落語作品などが数編収録されている。

Akuiginko

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