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『かがやく月の宮』

宇月原 晴明 著

新潮社

古典「竹取物語」をベースにした物語。

劇中劇ならぬ作中作、とでもいうのか?

おそらく平安時代。とある女流作家が物語を書けず、父より受け継いだ古の秘巻「かがやく月の宮」を紐解くところから始まる。

巷で知られている「今は昔、竹取の翁というものありけり…」で始まる竹取物語とは違っているような、だがしかし竹より生まれ出でたという不思議の姫のにまつわる物語が書かれた書。

読み進めるほどに、古の人物や出来事と重なるような思いにとらわれる。

これは真なのか、虚なのか、虚より出でた真なのか、真より出でし虚なのか…。

もちろん、虚実としか思えない物語ではあるのだが、それは美しくも儚く哀しい物語でもあった…。

「かがやく月の宮」の中心となるのは、かぐや姫というより時の帝。

まだ若いが体が弱い帝。

御簾より出ることはほとんどないが、そんな帝にも妖しの姫の噂は漏れ聞こえてくる。

かぐや姫に求婚した5人の殿上人が、かぐや姫の望む5つの宝を求め、あるものは命を落とし、またあるものは行方知れずとなる。

かたや大国・唐より日本国の隷属を促す使者が訪れ、宮廷内は藤原一族に権力が集中していた。

不穏な情勢の中、帝はかぐや姫に今は亡き姉宮の姿を垣間見る…。

「かがやく月の宮」は現実的な舞台でありながら、ずっと非現実的でもある。

5人の殿上人はかぐや姫欲しさというより、自分の名声を広げる為に宝を探し、自滅してゆく。

竹取の翁が養っていたのはなんだったのか?ラストはなんだかSFである。

もっとさらっと読み終わるだろうと思っていたのに、なかなかページが進まなかった。

もちろん、現代文で書かれているのだが、時々古語辞典が必要と感じるような言葉や表現があり、読みにくかったかも。

かぐや姫が月に帰るクライマックスは、とても劇的でスピード感があって入り込んでしまったけれど。

うーん、かぐや姫、天照、阿瑠天美須…。

で、この「かがやく月の宮」を読み、新しい物語を紡ぎだすのがかの有名な平安時代の女流作家であった、という締め。

最後の最後まで読むと、”かの女”が誰だか分かる。

もしかして古典や歴史に詳しい人なら最初から分かるのかも。

Kagayakutsukinomiya

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