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『マタタビ潔子の猫魂』

朱野 帰子 著

メディアファクトリー

憑き物筋のお話…と言ってもおどろおどろしいホラーではない。

読み始めは、コメディーちっくな自己啓発的小説かな?と感じたが、そうでもない。

主人公は、聖武天皇の御世から生きているという猫魂(注意:妖怪の猫又ではないのだ。)で、現在の飼い主(宿主)に”メロ”と名付けられた猫である。

「吾輩は猫である」のように終始このメロ視点で描かれる。

猫魂は”夏梅種”という憑代としての力を持つ女たちによって飼われ、使役されてきたが、時代が変わりこの夏梅種の血筋も殆ど途絶え、

今となってはメロの飼い主である田万川潔子だけになってしまった。

そんな力を持つはずの潔子だが、本人にその自覚も知識もなく、

気の弱い性格が災いして、周囲に気を遣ってばかり、言いたいことも言えない冴えない生活を送っている。

メロが潔子に同調できるのは、潔子の中の暗いネガティブな思いが蓄積して爆発しそうになったその瞬間。

メロは潔子の中で眠っていたパワーを増幅させ、ターゲットを追い詰める。

そのターゲットとなった人間の極端な性質は、その人間の弱みに付け込んだ憑き物のなせる業であり、メロはその憑き物をエサとしているのだ。

だから、潔子に同調するのは潔子のためとか、復讐とかそんなことでなく、ただ腹を満たさんがため…だったりする。

メロに憑かれた潔子にはその記憶がないので、翌日潔子は、なんだか分からないけどすっきりしてる…けど体中が痛かったり疲れていたりするのである。

鬼海星に憑かれた先輩派遣社員、洗熊に憑かれた潔癖男性社員、西洋蒲公英に憑かれた大学時代の同級生、欧羅巴毛長鼬(フェレット)に憑かれた後輩…

それぞれなかなか含蓄が含まれた話だった。

潔子のはっきりしない性格が悪いと言えばそうだけど、

潔子のような人がたぶんたくさんいると思う。だからとても潔子を笑えない。

自分の力でなんとかしないとと分かってはいるけど、ついついアヤシイ占い師のアヤシイ格言に惹かれちゃって、散財してしまうとか。

妖怪?対猫魂の対決物語とはいえ、復讐果たしてすっきり♪…という気分にはならず、なぜかちょっと苦い印象が残ってしまうそれぞれの物語であった。

まあ、あまり身につまされる感じのないような人にとっては、娯楽作品だと思う。

そうそう、町内の神社に棲む、猫又の黒ブチ先生がナイスキャラ!

Kurobuchisensei

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