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『綺想宮殺人事件』

芦辺 拓 著

東京創元社

琵琶湖畔に、富豪によって建てられた、とんでもなくデコラティブで、壮大で、豪華で、奇怪な建築物(建築群と言った方がいいのかもしれない)、その名も「綺想宮」。 

そこに本来招かれるはずだった探偵の代理として訪れたのは、弁護士でもあり探偵でもある森江春策。 

彼はそこで、性別を超越したような完璧な美を備えた綺想宮の案内人兼使用人(?)の二十重亜綺楽(はたえあきら)をはじめとした、

7人の個性豊かな、というか、アクの強い「先客」たちと出会う。
古今東西、世界中の美術品や発明品やインストルメンタルなどが所狭しとおかれ、装飾されたその”城”で、

天地創造の七日間を表現する美しい旋律が流れるたび、

「ファウスト」に出てくる四大呪文になぞらえたような状況で、

ひとり、またひとりと陰惨な最期を遂げる。

膨大な知識と、薀蓄を武器に、森江春策は、その事件の謎と、この建造物を建てた富豪・万乗庫之輔という人物の「綺想宮」に込めた謎に挑む…


とにかく、最初から最後まで、自然科学、芸術、文学、物理学…ありとあらゆると言っても過言ではないくらいの薀蓄、知識、ペダントリーの応酬で、

(京極夏彦氏による百鬼夜行シリーズを知っている人ならば、それはあたかもここに出てくるすべての登場人物が中禅寺秋彦か!?と感じるほど…)

読んでて、当然知らないことばかりだから興味深いけど、頭に入って理解できているかと言えば、おそらくほとんど脳みそを通過しただけだろう、という感じである。

事件そのものだけを取り出せば、猟奇的連続殺人事件なのだろうけど、

結果的に、この膨大な薀蓄群が事件の核であったりしたようなので、油断できない。

しかもそれはその薀蓄を理解しようがしまいがはあまり推理には関係ないときている。

いや、もちろん、それらの知識を持っていれば、ストーリーを読み解くことも可能なのかもしれない。

最終的に、事件の真相や犯人の動機というのが、なんだかとてもスケールが大きいというか、野望ともいえるようなもので、とてもリアリティーは感じられないのだけど、

なにしろとにかく森江春策の豊富すぎる知識(少しはタネがあるものの)の披瀝を読まされ、現実感のない舞台を想像させられたあとだと、

そういうこともあるのかもね…と、

私の乏しい脳細胞は半ば理解の範疇を超えたようにあきらめ、納得した感じ。

最後になって再び出てくる、冒頭で出てきた『G街の店「青い鷺」』のことなんて、

違う本の話だったかと思うほど忘れていたし。

Kisoukyu

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