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『テンペスト 下 花風の巻』

池上 永一 著

角川書店


上巻で国相殺しの罪で流刑になった寧温だったが、

離島の現状やそこにも押し寄せる列強の影に、琉球の危機を感じ王宮に戻りたいとの思いを強くする。

熱病にかかり山に捨てられた寧温は、本来の性である真鶴に戻り、山で隠れ暮らしていたが、

ひょんなことから役人の目に留まり、王宮へ行かないかと誘われる。

那覇に戻った真鶴は雅博の元に駆け戻るつもりだったのに、いつの間にか尚泰王の側室試験を受けさせられ、あれよあれよという間に側室に上がることに。

時は幕末。黒船は日本の前哨戦として琉球の支配をもくろみ、ペリーが条約を締結せんとせまっていた。

のらりくらりとかわしていた朝薫だったが、この場をしのげるのは寧温だけだと感じ、

同じように感じていた王によって恩赦が出され、

八重山に流刑になっているはずの寧温が呼び戻される。

側室として御内原にいる真鶴は悩んだ末、兄・嗣勇の協力を得ながら、役人・寧温と側室・真鶴の危ない1人2役を演じることを決心する。

清国の衰退、強くなる薩摩の影響力、そしてせまりくる列強諸国…寧温と真鶴は評定所と御内原を秘密の通路で駆け抜ける。

やがて、真鶴の不在を怪しむようになる真鶴の親友・真美那。

そして、側室・真鶴の体に訪れた兆し…。

とにかく上巻に負けず劣らず、波瀾万丈、次から次へとめまぐるしいこと。

真鶴の姿は翻弄される琉球そのもののよう。

真鶴も凄いが、上巻で意外にあっさり退場したな、と思っていた元聞得大君・真牛が、やっぱりそのままでは終わらなかった。

めちゃくちゃさは真鶴以上かもしれない。なんだか痛々しくさえ思えてきた。

そんな中、お嬢様爆弾を炸裂させる真美那がナイスキャラ。

なんだかんだ言ってこの人が一番強いんじゃないかと思えた。

朝薫や嗣勇の最期はとても切なくて、特に嗣勇の最期は泣きそうになった。

真鶴(寧温)の立場からすると、ハッピーエンドと言えなくもない終わり方。

最初から最後まで、休む暇がないような小説だった。

列強の仲間入りを目指していた当時の日本の最初の侵略地が琉球だったのか…と思った。

こういう琉球の歴史、全然知らなかった。

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