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『魔書 アントライオン』

荒俣 宏 著

主婦の友社

荒俣宏氏の著作で、さらにカバーや挿絵を天野喜孝氏が描いてるということで思わず手に取ってしまった。

おどろおどろしい雰囲気が興味をそそる…と思いきや、内容はそれほど「おどろおどろ」しくはない。

かといって、爽やかな物語というわけでもないけれど。

プロローグとエピローグはSFっぽい。

現にプロローグを読んだ時は、どこか遠い宇宙の話かと思った。

本筋は、唐突に始まり、そこがどこで描かれているのはどんなヒト(?)で、誰なのか、といった情報がまったく描かれない。

そしてそのまま進む。

なにしろ、主人公たるその者自身、己が何者で、今どこにいて、何をすべきか分からないそんな状態で、とりあえず走ったり逃げたり戦ったりするのだ。

太宰治の「走れメロス」に似ているな、というのは私の個人的な印象。

ギリシア神話を読んでいるようなイメージもある。

主人公らしい、どうやらその人間は「バニタス」という名だと教えられ、次々にあらわれる「矛盾獣」という怪物と死闘を繰り広げる。

あらすじがあるようなないような…。

とにかく唐突に始まって唐突に終わる感じ。

先にも書いたが、SFのようでもあり、神話のようでもあり、世界の七不思議を物語っているようでもあり…。

よくわからないうちに読み終わってしまった。

本の厚さの割には読みやすかったのだろう、あっさり読み終わったから。

ただなんとも形容し難い本だった。

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