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『小さいおうち』

中島 京子 著

文藝春秋

かつて家政婦として半生を過ごしてきたタキは、仕事を辞めた後、家事指南書のようなものを書き、好評を得ていた。

担当の編集者から次作を、と請われたタキは、

生涯で一番記憶に残っている平井家に奉公した頃について書いておきたいと伝える。

編集者からそういう本は出せないと言われるが、

タキは自分のためにノートにあの頃のことを書き綴る。

まるでお嬢さんのような美しい奥さま・時子と、ご主人と、時子の一人息子・恭一ぼっちゃんと過ごした、

あの小さいけれど素敵なおうちで過ごした日々のことを…。

読み終わっての第一印象は『永遠の0』に似ているな、だった。

タキの甥が、タキのノートを元にタキの思い出?を探したりするあたりとか特に。

映画は見ていないけれど、映画化されたという印象が強く、

それを知った上で読んだので、時子は松たか子、タキは黒木華、そのイメージのまま読んでいた。(他のキャストは知らない)

特に違和感は感じなかったけれども、映画のコピーがもう少し、

なんていうか、奥様の秘密を知ってしまった、まだ小娘のような女中の話で、

淫靡な、というかも少し艶っぽい話なのかな~と思っていたのだが、全然違っていた。

戦争の足音が聞こえてくるような暗い時代の頃のことも描かれてはいるが、

そこに描かれたその時代はイメージより明るく、何も知らされない、

しかもちょっと裕福な家庭ってこんな感じだったのか、と思った。

(そういう読者が持つだろう疑問は、タキのノートを読んでいる甥・健史が代弁してくれている。)

ずっとタキの一人語りで終わるのかと思いきや、最終章はタキの甥・健史の視線で描かれる。

結局、分からなかったこともあるけれど、

その辺は読者のご想像のままに、と言ったところか。

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