『書楼弔堂 破暁』
京極 夏彦 著
集英社
タイトルからして、なんと読むのか分からない。
表紙は月岡芳年の「うぶめ」。
京極夏彦作品らしい妖怪ものなのか?
書楼とあるから、書(本屋)に関する話なのか?
とりあえず、シリーズものの続編とかではないらしい…。
タイトルは「しょろうとむらいどう はぎょう」と読むそうだ。
弔堂という古本屋に吸い寄せられるように訪れた「客」たちの物語である。
京極作品で古本屋といえば、百鬼夜行シリーズ(京極堂もの)を思い浮かべるが、弔堂はまた別のお話。
(ネタバレになってしまうけど、実は完全に無関係でもない)
舞台は明治初期くらいか。
巷説シリーズよりちょっとあと、百鬼夜行シリーズよりしばらく前、そんな頃か。
他の京極作品とはまた違う世界の物語かと思ったが、巷説シリーズに出てくる人物や、百鬼夜行シリーズに出てくる人物に所縁のあると思われる人物も出てくるから、繋がった物語ではあるのだろう。
「弔堂」の主人(元は僧だったが、思いあって還俗。世に出ている本を必要な人と結びつけることで"成仏"させる、そのために経営する古本屋に「弔堂」と名付けた)や、
「弔堂」唯一の店員(?)綺麗な顔をした童・しほるにも興味は持ったけど、
なにより巷説シリーズや百鬼夜行シリーズとの繋がり方が気になって読みふけってしまった。
いくつかの短編が集録されているが、それぞれ話の中心となる人物が、歴史的に超有名な人物だったり、文学史を勉強していれば(あるいはしていなくとも)絶対に名前ぐらいは聞いたことがあるであろうという著名な作家たち。
彼らがその後そうなったのも、そんな作品を世に出したのも、この「弔堂」との出会いがあったからなのだ、というようなストーリー。
もちろんフィクションだろうけど。
だから、それぞれの物語のラストには必ず「それは誰も知らない」とか書かれてあったりする。
何も知らなくても、興味深い小説だと思うけど(京極作品に触れたことがないと、ちょっと回りくどいぞ…と思うこともあるかもしれないが…)、
百鬼夜行シリーズや巷説シリーズを読んでいれば、おや、これはっっと興味を引かれること間違いないし、
京極作品読んだことがなくても、を歴史や文学に詳しい人ならさらに興味深い小説かもしれない。
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10年以上前に、のめり込んだ「京極」シリーズ!あの夏を思い出す…
水木しげる先生追悼もあるし、妖怪再び!
文学者は嫌いだが、読んでみたい。
投稿: のえる | 2016年8月25日 (木) 23時30分
>のえるさま
そうですね~、「京極堂」シリーズってもうそんなに経つものなんですよねえ。私が読み始めたのは、文庫版が出て、さらにちょっと経ってからなので遅かったとはいえ、10年以上経ちますものね…。
「弔堂」もシリーズ化するのかなあ。
コメントありがとうございました
投稿: イヌイカ | 2016年8月26日 (金) 06時48分