『伯林星列 ベルリン・コンスティラツィオーン』
野阿 梓 著
徳間書店
赤と黒が印象的な表紙デザインに思わず手に取ってしまった文庫。
退廃的官能小説、かと思ったら意外にハードな歴史SF(?)小説だった。
史実に沿いつつ、二・ニ六事件が成功していたら…という架空の物語、ということを解説を読んで知った。オイオイ。(昭和史苦手…)
主人公の伊集院操青は、ドイツに留学中の16歳の青年で、母親似の美少年。
しかしドイツ軍の関係する事故に巻き込まれて命を落としたと思われていた。
しかし、操青だとされていた遺体は、実は操青と行動を共にしていた安南人の黎のものであった。
ドイツでの操青の保護者であった叔父・伊集院継央はその人違いに乗じて、抑え込んできたよこしまな衝動、暗い欲望を抑えきれず操青を死んだものとして手続きを行うと、彼をとんでもない境遇へと陥れるのだった…
時は世界大戦前夜。
ヒトラー総督率いるナチスの台頭、日本では青年将校による革命がおこり、世界はやがて訪れるだろう戦争の雰囲気を感じ取ったかのような暗い静かなざわめきに満ちていた。
叔父の手によって、とある館で”調教”され、性の奴隷と化した操青。
そんな操青に溺れる叔父・継央。しかし、混乱した日本から帰国命令が。
死んだと届け出た操青を連れて帰るわけにはいかず、継央は引き裂かれるような思いで単身帰国。
継央の行動に不審を抱いたゲシュタポの上官ミューラーは、操青の存在を知り、表向きは五輪招致活動のため渡独してきた元外交官(諜報員)黒澄(実は北一輝より受けた極秘の諜報活動のため渡独)に、操青を利用する目的のため預ける。
操青の存在は、ドイツ側にしても日本側にしてもやっかいな問題をはらんだもので、諸刃の剣となるものであったのだ。
操青が実の叔父の手によってその身を貶められたという事実を知り黒澄は憤慨するが、もはやどうすることもできず、
操青は己の意思とは無関係に、世界の情勢など何も知らぬまま、その”調教”の成果を利用され、露、英、米、独、日などの諜報活動に巻き込まれていくのだった…。
なんというか、色んな意味でハードな内容だった。
当時の国際情勢をよく知らないというのもあって、まあ入り乱れすぎてよく分からない。
ドイツの中でもこんなにそれぞれがいろいろと思惑があり、必ずしも一枚岩でなかったのか、と驚く。
アブノーマルな官能(?)小説というだけではない、暗さと怖さが潜んでいる。
なるほど、確かにこれは「異才の放つ問題作」だ。(文庫の後ろの解説部分にそう書いてあった。)
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世界最古の商売は娼婦とスパイとゆーじゃないですか。地でいってますね。ソソラレマス!
投稿: のえる | 2016年12月19日 (月) 13時23分
>のえるさま
”世界最古の商売は娼婦とスパイ”
なるほどですねえ。
コメントありがとうございました!
投稿: イヌイカ | 2016年12月20日 (火) 06時55分