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『月長石』

原題:THE MOON STONE

Wilkie Collins 著

中村能三 訳

創元推理文庫

その本の厚さに手に取ってみたところ、”古典的名作”とあったから、推理小説好きとして読むべき作品か!?と思い読んでみた。

インドの秘宝「月長石(ムーンストーン)」を巡る忌まわしいホラーサスペンス…的なものを想像していたのだが、ちょっと違った。

戦争のさなかインドの寺院から持ち出された(盗まれた?)月長石は、やがてイギリスの裕福な上流階級の美しい娘の元に渡る。

しかし、娘に贈られた誕生日の夜、月長石はしまったはずの引き出しから忽然と消失してしまった…。

本の前半は、この家の忠実な老執事ベタレッジの記録という体で書かれているが、

とにかく本題以外の老執事の独り言のような内容が長い。

このまま永遠に続くんじゃないかと思うほどで、月長石消失事件はどこにいった?と突っ込まずにはいられない。

やっと焼失したと思われる前後の日の回想記録になり、有能な刑事部長が登場となるのだが、

この刑事部長、金田一耕助のような”名探偵”的役所かと思いきや、

庭師と薔薇の話をするばかりで、解決前に引退して田舎に引っ込んでしまったりする。

月長石には不吉な伝説がつきまとうということになってはいるが、それで呪われたとか殺されたとかそういう感じも薄い。

確かにこの宝石のお蔭で関係者各位はいろいろ迷惑をこうむるし、しなくていい苦労をしているようなところもあるから、持つと不幸になると言えなくもないけど。

最後まで読んだ印象は、推理小説というより恋愛小説っぽいなあとも。

結局謎を解く重要な”探偵役”は、娘の誕生日パーティーに出席していた知り合いの医者の助手(不幸な生い立ちを持つ)だったり、

宝石消失の謎は「え、それアリ!?」な結末だったり、

ある意味意外な展開の物語ではあった。

私の知っている日本のミステリー作品とはかなり趣の異なる小説だな、と感じた。

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