新書「観応の擾乱」を読んだのだ

日本史は嫌いではないけれどそれほど詳しいわけでもなく。

なかでも室町時代ってよく知らないよなぁって思って

たまたま新聞で目にした

「観応の擾乱」

という岩波新書を借りてみた。

読み始めたら“日本史の授業で必ず出てくる言葉”とあったけど、

ワタシは聞いた覚えがないぞって思ったんだけど、そのあたりの授業中、居眠りでもしてたかしら?(^^;

室町時代といえば、鎌倉時代の次で戦国時代の前で

足利尊氏が室町幕府を開いたんだよね、

義満が金閣寺を建てたんだよね

…ってそんなくらいの印象しかなかったから

日本を分断するような内乱時代があったなんてびっくりした。

もちろん、南北朝という、朝廷がふたつ存在した異様なことがあったというのは知識としては知ってはいたけど、

室町時代というよりは南北朝時代と分けて考えていた。

うーん、歴史を年表で考えずに単語だけ暗記してたのが分かる…。

室町時代が安定(?)する三代義満の頃まで、とくに初代尊氏の頃って、

尊氏(&師直)派、直義派、北朝、南朝、力をつけてきた各地の守護たちそっちについたりがあっちについたり、めちゃくちゃ戦国だったのねえ。

兄弟とか親子とかの間で考え方の違いなのか、価値観の違いなのか、はたまた単なる相性の合う合わないなのか…

とまあ、一応最後まで読んだものの対立構図や相関関係は把握できる気がしなかった。

結局、文字を目で追うだけの読書になってしまった感じは否めないが、

ウチの近所にある“古戦場”が、この時代の合戦の現場だったということを知ることができてよかった。

名称として「古戦場」の名が残ってはいるものの、実際どんな歴史の舞台だったのか全然知らなかったから(知りたいと思っていた)。

「川中島の合戦場」のような観光地には当然なっていない。

何もない野っぱらですけどね。(当時はもっと何もないか。武蔵野なんて片田舎だったろう。)

 


ポチッとよろしく!

『綺譚の島』

小島 正樹 著

原書房

 戦国時代に起きた忌まわしい伝説が今なお島民の中で根強く生きている小さな島で、20年前に猟銃が暴発する事故が起きた。

事故の被害者である網元の長男が、事故の直前光る岩と浮かぶ鎧武者を見たという。

伝説の”一領具足”の怨霊を鎮める為に再び執り行われた忌まわしい儀式「贄の式」。

その翌日から「贄の式」の参加者たちが、この島に伝わる伝説になぞらえられたかのような死に方で次々と殺されてゆく…。

この孤島に本土から出向していた役場職員・高品とその後輩で自称名探偵の海老原が、過去の伝説と事故、今回の事件の謎に挑む。

…というか、海老原のひとり舞台である。

高品はワトソン役もいいところ。ほとんど島の観光案内人といった感じ。

伝わる伝説や儀式、島の雰囲気は暗くて重いのだが、どこか飄々とした海老原や本土からやってきた刑事・梶谷、この二人のやりとりなどが割と軽くて全体の雰囲気を変えてくれているようだ。

確かに仕掛けがいっぱいの大どんでん返しで、最後の最後まで興味は尽きなくて面白かった。

けど、物語として読ませるという感じは希薄で、これらトリックを種明かしさせんがための事件を描いた(表現が難しいな)、という感じもしなくもなく。

とにかくてんこ盛り感満載といった印象だった。

海老原という人物は興味深かったが、イマイチ具体的な姿というのが想像できなかったなあ。

舞台が知多半島沖に浮かぶ贄の島という孤島ということなんだけど、まったく別の作者によるミステリーの舞台も知多半島沖の別の孤島だったような気がする。

知多半島沖って孤島が多いのかな?

『鬼談百景』

小野 不由美 著

角川文庫

いわゆる”学校七不思議”みたいな(学校だけじゃないけど)、怪談がたくさん(解説によると99話あるらしい)語られている。

1話が長くても3~4ページとかなので、次々読めてしまう。

奇妙なもの、ぞっとするもの、不思議なもの、ちょっと面白いと感じなくもないもの、ほっこりしなくもないもの…

怪談といっても様々なものがあるなあ、と思った。

理由も理屈もはっきりしないし、解明できるようなものではないので、

どうなったの?どうなるの?と気になってしまう話もあるが、

そのなんともすっきりしない感じ、もやもやっとした感じが怪談の怪談たるゆえんなのだろう。

ホラー映画のような身の毛もよだつほど、もの凄く怖いー!…というほどではなかったが
(中には、そういうのもなくはなかったかも)

でもやっぱり、夜中にひとりで想像たくましく読んでたりしたら、ちょっと背後が気になったり、でも振り向けない、そんなことになるかも。

それにしても。

ワタシはミステリーやホラー小説は嫌いではないが、こういう怪談は苦手である。

なんで借りちゃったかな…。

それが一番のミステリー(苦笑)。

面白かったけど。

深夜、慣れない場所で独りでいる時に思い出したくないなあ。

『魂の駆動体』

神林 長平 著

早川文庫

著者が、車と猫が好きなんだな、ということが伝わってきたSF作品。

ストーリーは二部構成。

第一部は「近未来編」。

自動車が、単なる移動手段として「自動車(自動で目的地まで運んでくれる車)」となっている未来。

もはや懐古趣味的なものとなっていたかつてのいわゆる「クルマ」。

その「クルマ」を復活させることに生きがいを見出した<私>と友人の子安は、クルマの設計図を書きあげる。

走る楽しみを与えてくれるクルマを自分たちの手で再現し、手に入れるという”夢”。

しかし、実際には昔の部品も、それらを再現する金もないため難しかった。

そして第二部「遠未来編」。

翼人のキリアは、かつて存在していた「人間」を研究するため自ら「人間」となり、研究所で作りだした人造人間のアンドロギアと生活を始める。

同時期に”遺跡”で偶然見つかった化石となったクルマの設計図。

その設計図を基に「クルマ」を実際に作り上げ走らせる研究チームが立ち上がる…。

 自転車や自動車の設計について専門用語がいっぱい出てきて、私にはちんぷんかんぷんだったのだが、何故か興味深く読むことが出来た。

登場人物たちのセリフを通して、書き手の楽しさみたいなものが伝わってきたからだろうか。

眠くなってもおかしくなさそうな内容なのに、書き方が上手いのか、表現が上手いのか、

とても読みやすかったし、その世界に入り込むことが出来た。

特に第二部は、とても幻想的な世界なのだが、魅力的だった。

設定とかはずいぶん違うのだけど、映画「アバタ―」のイメージをなんとなく彷彿とさせた。

でもそう感じるのは私だけかもしれないけれど。

『月長石』

原題:THE MOON STONE

Wilkie Collins 著

中村能三 訳

創元推理文庫

その本の厚さに手に取ってみたところ、”古典的名作”とあったから、推理小説好きとして読むべき作品か!?と思い読んでみた。

インドの秘宝「月長石(ムーンストーン)」を巡る忌まわしいホラーサスペンス…的なものを想像していたのだが、ちょっと違った。

戦争のさなかインドの寺院から持ち出された(盗まれた?)月長石は、やがてイギリスの裕福な上流階級の美しい娘の元に渡る。

しかし、娘に贈られた誕生日の夜、月長石はしまったはずの引き出しから忽然と消失してしまった…。

本の前半は、この家の忠実な老執事ベタレッジの記録という体で書かれているが、

とにかく本題以外の老執事の独り言のような内容が長い。

このまま永遠に続くんじゃないかと思うほどで、月長石消失事件はどこにいった?と突っ込まずにはいられない。

やっと焼失したと思われる前後の日の回想記録になり、有能な刑事部長が登場となるのだが、

この刑事部長、金田一耕助のような”名探偵”的役所かと思いきや、

庭師と薔薇の話をするばかりで、解決前に引退して田舎に引っ込んでしまったりする。

月長石には不吉な伝説がつきまとうということになってはいるが、それで呪われたとか殺されたとかそういう感じも薄い。

確かにこの宝石のお蔭で関係者各位はいろいろ迷惑をこうむるし、しなくていい苦労をしているようなところもあるから、持つと不幸になると言えなくもないけど。

最後まで読んだ印象は、推理小説というより恋愛小説っぽいなあとも。

結局謎を解く重要な”探偵役”は、娘の誕生日パーティーに出席していた知り合いの医者の助手(不幸な生い立ちを持つ)だったり、

宝石消失の謎は「え、それアリ!?」な結末だったり、

ある意味意外な展開の物語ではあった。

私の知っている日本のミステリー作品とはかなり趣の異なる小説だな、と感じた。

『落ちこぼれネクロマンサーと黒魔術の館』

原題:WARD AGAINST DARKNESS

メラニー・カート 著

圷 香織 訳

創元推理文庫

ネクロマンサーってなんだっけ?

…という単純な疑問だけで読んでみた。

医師を目指すも、その道を外れてしまったネクロマンサーの血を引く生真面目なワードと、彼の呪文によって蘇った美貌の殺し屋・シーリアの冒険物語で、シリーズ2作目とのこと。

森の中を賞金稼ぎから逃げる2人の姿から始まる。

いきなりで何がなんだか分からない。

読んでいくうちに分かってきたのが、死んだシーリアを蘇らせたのがワードであり、なんだかんだあって殺人の濡れ衣を着せられている、そんな2人の首に賞金がかけられていて、その結果、賞金稼ぎに追われるはめになっている、ということらしい。

なかなか腕の立つシーリアは気が強く、

ワードは、魔術の才能はその家系の血筋のくせに弱く、内省的で、生真面目。

性格は正反対な2人だが、どうも惹かれあっているらしい。

お互いの気持ちには気が付いてないけど。

ネクロマンサーとか、ヴェスペリティとか聞いたことのない単語が、いかにも知っていて当然のように書かれていて、それらについての説明的な文章はなく、登場人物の会話や思考から理解していくほかなく、その辺りが大変だった。

魔法や魔術が出てくるファンタジーなのだが、結構血みどろで陰惨。

ゾンビ映画っぽい印象すらあった。

ワードとシーリアの関係は、うまく行きそうで行かない感じにもやもや。

いい奴なんだけど、なんだか頼りない、けど変なところで意固地なワードの態度に、シーリアでなくてもイライラするかも。

内容、相関関係、舞台設定など、(いきなり2作目だからということもあるかもしれないが)説明が一切ないので不明なところが多く、想像するしかなくて、このファンタジーの世界観がちゃんと把握できたかは不安だが、

とりあえず読んでいくうちに先が気になるようになり、クライマックスでは一応物語に入り込めたかな?

とにかく、もう少し説明が欲しかったな、という感じ(1作目から読めということか)。

ちなみに「ネクロマンサー」とは、死者を蘇らせる術を使う呪術師ってことらしい。

以上。

『キウイγは時計仕掛け』

森 博嗣 著

講談社文庫

学会を翌日に控えた夜、会場となる大学内で学長が射殺される。

その数時間前、学会本部宛てにプルトップの刺さったキウイが入った箱が、宅配便で届けられていた。

箱の中にはその手榴弾に見えなくもないキウイひとつのみ。

犯行予告のような手紙もなし。ただよく見るとキウイには「γ」と見えなくもない文字(印?)が書かれていた…。

学会に参加するため、犀川先生、萌絵、国枝先生、恵美、山吹、雨宮、海月といった”いつものメンバー”がその大学に集まるが、

特に事件に関わるようなこともなく。(ラストにちょっと恵美と雨宮が巻き込まれる場面もあるけど)

彼らが学生時代だったころのような積極的な姿勢もなく、

特に萌絵が落ち着いちゃったなあ…という印象(苦笑)。

一応「γ」の文字は出てくるものの、一連のギリシャ文字事件に関連があるのかないのか、宅配便にして送ってきた意図とはなんなのか、さらには冒頭の射殺事件のはっきりした解明もない感じ。

つまりは、Gシリーズを通して最終的になにかしらはっきりさせてくれるだろう、

きっとこの作品もそのための伏線のひとつに違いない、と思って読む、そんな感じ。

あの天才が何をしているのか、何をしようとしているのか、それともそう考えていること自体まったく見当違いだったりするのか。

この作品で気になったのは、温泉に入っていたキウイと、忘れた頃に登場する島田女史のこと。

ワタクシ個人的には、久しぶりに犀川先生が犀川先生らしい感じを醸し出してくれただけでも読む価値があったかな、なんていうのは犀川ファンの心理かな。

ヘビースモーカーの先生がまさかタバコをやめちゃうなんて…。

そこに一番びっくりしたかも。

『ジグβは神ですか』

森 博嗣 著

講談社文庫

Gシリーズは終わったものだと、勝手に思い込んでいてすっかり油断していた。

なんと2015年10月にシリーズ新作が、さらに2016年11月にさらに次の作品が出ていた。

我ながら、情報に疎くなったものだと。

2015年10月かぁ…まあイロイロ忙しかった時期だったかな。

それでも新聞の新刊の広告スペースや、電車内の吊り広告とか見ていたはずなんだけどな。

気が付かなかったのか、無意識に見ないようにしていたのか。

さて、Gシリーズではおなじみの面々もそれぞれ進級就職などしたようで、恵美は隣県の公務員になっていた!

とはいえ今回のストーリーと恵美の就職はあまり関係がない。

 

就職して一年余り、恵美は久しぶりに大学時代の親友でTV局に就職した雨宮純と郊外の高原へ避暑へ行く予定を立てる。

格安のコテージがあると大学助教となっている先輩・山吹から情報をもらったのだ。

そのコテージがあるのは美之里という宗教団体の敷地内にある一般開放されたエリア。

研究の一環で山吹は調査に来たことがあったのだった。

奥には、美之里に所属する芸術家たちが暮らすエリアがあり、そこは一般開放されている場所とは柵で隔てられていた。

恵美たちが到着する前、水野涼子というノンフィクション作家がその芸術家たちが暮らすエリアを取材するために美之里を訪れていた。

芸術家たちに取材している途中、水野は美大生が使っているというコテージで、棺に納められラッピングされた美しい女性の遺体を発見する…。

恵美、純、山吹、海月、萌絵、睦子、さらには紅子まで登場。

そして四季博士の影がこれまで以上にはっきりと見え隠れしている感じがした。

相変わらず、ミステリーとはいえ事件について犯行の動機や犯行の全貌というものについての丁寧な解説があるわけではない。

登場人物たちの会話などから想像する他ない。

つまりはこの物語のメインは事件の”謎解き”にあるのではないということなのだろう。

Gシリーズはずっとこんな感じだったし。謎と言えばすべてが謎。

「神」や「宗教」を持ち出されてしまっては、何でもアリじゃん、という気になってしまうし。

だから、これまで結構消化不良な感じがあったのだが、今回は最後の方に睦子と紅子のサシのシーンが出てきて、なんだかそれですっごい満足感を得てしまった(笑)。

萌絵がこの二人について「ものすごく意気投合するか、あるいはものすごい喧嘩になるかのどちらかだと思う」みたいに言っているが、私もそう思った。

さて、結果は…。

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「何故、私を起こしたの?」<『ジグβは神ですか』256ページより。>

『ユーゴの不思議な発明』

原題:THE INOVENTION OF HUGO CABRET

ブライアン・セルズニック 著

金原 瑞人 訳

アスペクト文庫

文庫なのだが、開いて驚いた。

絵ばっかり!

鉛筆画の挿絵で物語が進んでいく感じ。文章は横書き。絵本に近いかもしれない。

ただかなりの枚数だから、まるで映画の絵コンテを眺めているようにも感じる。

それというのもこの物語は、実在の人物で映画発展の父とも言われるジョルジュ・メリエスについて著者が調べていくうちに、インスピレーションを得て創作した物語らしい。

舞台は19世紀のパリ。

駅で飲んだくれのおじに代わり、構内すべての時計の管理修理をしている孤児・ユーゴが主人公。

手先の器用なユーゴは、仕事の合間に父の残したノートを見ながら、父が修理していたからくり人形を引き継いで修理していた。

この「からくり男」が動き出せば、自分にとって別の輝かしい未来への道筋を文字通り描き出してくれることを信じていたのだ。

物語は、ユーゴが部品欲しさに駅にあるおもちゃ屋でおもちゃを盗もうとしたところを店主に見つかってしまうところから始まる。

ラストに至るまで、ユーゴには試練の連続といった感じで

(でも、生活や部品のためとはいえユーゴがどろぼうすることが原因だったりするから、自業自得と言えなくもないのだけど…。かたくなに内緒にしたりするし。)

なんだか可哀想な物語になってしまいそうな流れだったが、最後は素敵なハッピーエンドに落ち着いて、後味はさわやか。

偶然が重なりすぎているだろう、と思ってしまう大人向きではないかもね。

これはジュブナイルだ。

全然気が付かなかったけれど、訳者あとがきをよんだところ、マーティン・スコセッシ監督によって映画化されているそうだ。

邦題「ヒューゴと不思議な発明」。

…ん、そういえば聞いたことがあるようなないような…。

『輝夜姫』

清水玲子さんの絵は、とても綺麗で好きだ。

学生時代は友達にコミックスを借りていた。

自分でも文庫化した『月の子』は持っていて、今でもたまに読み返す。

少女マンガのジャンルだけど、ストーリーは結構ハードでSF色が濃い、というのが私の清水玲子作品に対する印象。(全部の作品を読んでいるわけではないけど)

んで、『輝夜姫』は、ずっと以前に友達に借りて途中まで読んでいたもので、続きが気になってはいた作品。

でも、なんだかマンガを読まなくなって、というか、以前ほどの執着心がなくなってしまって、

いや読めばマンガは好きだし楽しいし読みふけってしまうのだけど、

たぶん、時間的なものとか他にやることとか、心理的な余裕が昔に比べて減ったというのか、

マンガを読みだしてしまったらまたのめり込んでしまう自分を知っているのでセーブしているのか、

とにかくずっと”そのまま”になっていたんだけど、

先日TSUTAYAへ行って、レンタルコミックの棚を見ていたら、文庫化された『輝夜姫』を見つけ、14巻で完結したことを知り、やっぱり最後が知りたい!と借りてみた。

(1Weekレンタルで20冊まで1200円。ベルばらエピソードⅠ・Ⅱを借りても、16冊で範囲内だし。)

ネタバレ必至の感想だけど、まあ、だいぶ以前の作品だし大丈夫かな。

とてもとても話が壮大に膨らんでいたから、ラスト、どう着地するんだろうと1冊読み終わるたびに期待が膨らんだ。

まさか、そういうラストか…と。

ある意味ではハッピーエンドと言えなくはないのだろうけど、なんとなくもやもや…。

「大団円!まさにハッピーエンド!」…と手放しで感動できるラストではなかったなあ、私は。

主人公は晶だと思っていたけど、もしかして由なのかも、と思う時期もあり、最終的にはミラーが主人公だったのか、と感じた。

ドナーの少年たちが本体に移植されたころから、ミラーが中心になってきたなと感じていたけれど。

とってもキレイなミラーは絵になるし、晶に対する無償ともいえる愛は泣けるし、乙女心をくすぐる。きっと人気も高かったことだろう。

でもでも、由と晶のハッピーエンドが見たかったな、と思わなくもなくて。

ドナーの少年たち、全員が生きていて欲しかったなとも思ったし、まさか記憶が消えてしまうなんてってさ、切ないよなあ。

聡や高力士の最期とか哀しかったなあ。特に高力士はまさか、という感じ。

碧もそう。最後はまるで聖職者(殉教者?)。

マギーを嫌いになったさ。

こういうストーリー展開がフツーの少女マンガとは違う魅力なんだろうなあ。

『月の子』のラストもなんだか問題提起的なラストだったし。

文庫版の終わりに、作者と編集さんによる対談みたいのがおまけにあって、そこでも出ていたけれど

樹なつみさんの『花咲ける青少年』に似てるな、とも(このマンガはかろうじて学生時代に友人に借りて読み終えているのだ!これはまさに絵にかいたようなハッピーエンドだったな~)。

とってもキレイな女の子に、お金持ちのイケメン男性求婚者たち、という構図。

作品の源流にあるのが古典「かぐや姫」だしなー。

さて。

ストーリーがとってもとっても世界(宇宙?)規模に展開し壮大になった結果、読み終わって疑問点も。

(作者的には設定やビジョンはちゃんと創造していたけれど、描ききれなかったということもあるのかもしれない。)

晶は結局ミラーと結婚。中国の李家はどうなったの…?

柏木は自ら救った赤ちゃん・晶を溺愛していたのに、何故神淵島の施設に預けたの?

で、神淵島から逃げ遅れた晶を、何故柏木は自分の手元にではなく元妻の手元に?

離婚した際、ショウコさんが引き取っているけど、柏木は何故引き取らず肖像画で我慢?

神淵島から逃げた子供たちは、どういう経緯で日本の里親の元に?逃げたのなら施設の斡旋とかないよねえ?

由や碧が米軍施設にいたのも何故?碧はあとから来たみたいだし。それまで何処にいたんだ碧!?

(マギーの格好が許されているのも謎だが、何故かそれはあんまり気にならない。(笑))

まゆが李家の女官になるのに協力していたあのグラサンの女は一体何者だったの?

玉鈴の婚約者のひとりで、まゆを探してと依頼されたあのヒトはどうなったのだろう?

そうそう、ラシード王子(碧)やヒロキ(聡)以外に3人の婚約者がいたはず。彼らは…?

などなどイヌイカごときでは把握できなかっただけかもしれないけれど、疑問点がちょこちょこと。

なにしろ、ほぼ平日1週間で読み切らないといけなかったから、結構なハイスピードで読了。ゆっくり読み返せば解明できる点もあったかも。

でも、この一週間、とてもスリリングで面白かった。

根が単純なので、すっかり世界に取り込まれていたなあ。

最後に。

『輝夜姫』のなかで一番好きなキャラクターは?と聞かれたら…

最終的には、ロシアマフィアの日系人ババーニン(だったかな、確か。好きなのに忘れるし…)(守)だった。我ながらびっくり。

最初は、断然「晶」だったんだけど、信頼していた部下を殺され、怒りのままに人を無残に殺してしまったけれど、晶によって救われたババーニン(守)。その頃からの彼がとても好きになった。

ピークは洪水に襲われたロンドンにヘリで物資(&サットン)を届けるシーン。

それだけに、ラストのラスト。ミラーが彼の元を訪れた時、ドナー(守)だった時の記憶をなくしてしまったババーニンの姿は悲しかったなあ。

つまりは守の記憶を持ったイケメンのババーニンが一番のお気に入りキャラだったってことで。

(思いのたけをずらずら書いていたら長くなってしまった…。ごめんなさい。)








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