馬鹿と嘘の弓

『馬鹿と嘘の弓』
森 博嗣
講談社文庫
 椙田から探偵事務所を引き継いだ小川令子と、新たに事務所の社員となった加部谷恵美が中心となる新シリーズ1作目。
匿名の依頼でホームレスの青年を調査していた小川と加部谷。小川が調査中に遭遇したホームレスの男性は何故か小川達が依頼者より預かった青年の写真とまったく同じ写真を持っていた。果たして青年の調査を依頼したのは誰でその目的とは?…というのが主題か、と思ったが、読んでみるとなんとも…。森作品らしくすべてすっきりした答えはない。ラストにしても、実際起きた事件を彷彿とさせるような、そういう思考でそういうことを起こす…?現代社会の問題点、ってそう納得したくない終わり方。恵美ちゃんのことを思うといたたまれない…。彼女は前作(Xシリーズ最終巻)からなんだかつらい役回りな気がしてならない。タイトルは森先生らしい言葉遊び、かと思ったけど、それだけではなくて一応内容に沿ったものでもある、のかな。意味不明(難解)なとこもあるけど。理系というより社会学系ミステリでした。