午前三時のルースター

『午前三時のルースター』
垣根 涼介 文春文庫
旅行会社で営業をしている長瀬は顧客のひとりである宝石会社の社長から妙な依頼を受ける。社長の孫が年末にベトナムに行く手配とその添乗をしてほしいという。難関校に受かった褒美代わりに少年が望んだのがベトナムの訪問で、その実態は商用でベトナムに行ったきり行方不明となった社長の娘婿、つまりは少年の父親捜しだという。
どこか冷めたような長瀬、まだ中学生なのに妙に大人びた所のある少年、馬が合ってるような会ってないような長瀬の悪友・源内、ベトナムで雇ったタクシードライバーのビエン、ガイド代わりのメイ、即席とは思えないこの5人のチームワークが良すぎて、この中の誰か裏切者なんじゃ…?なんて思ったり。ベトナムに行ったとたんトラブルに巻き込まれハラハラしっぱなしだし、「謎」は解けるけど、たぶんハッピーエンドとは言えない終わり方で、長瀬と同じように少年の行く末を心配してしまう。タイトルから小説の内容を想像することは出来ないけど、読み終わって感じた一抹の切なさみたいな印象とこのタイトルの印象は合ってるなと思った。