偶然屋

『偶然屋』
七尾 与史
小学館文庫
表紙デザインやつくりは一見ライトノベル調。
”大学卒業後2年司法浪人した結果、あきらめて就活も全敗、「偶然」見つけた求人広告に応募してみたところ面接会場は錦糸町のパチンコ屋!?”…という出だしで始まり、個性的なキャラクターたちが軽妙に動き出す物語は気楽に読める1話完結の娯楽作品かと思いきや、
1話読み終わるごとに不穏な裏側が見え隠れしだし、人間の怖さ集団の心理の怖さ、そういったもので背筋がゾゾゾとなってくる。
ラストは浦沢直樹氏の『MONSTER』を彷彿とさせるような終わり方で、案の定続編あるそうで。
スプラッタな描写や暴力的なシーンのような怖さよりは、心理的にじわじわくる怖さで、続編が読みたいような読みたくないような…。
主人公の水氷里美は正義感が強く実直型でわりと好ましいけれど、ちょっと鈍すぎるような気がしないでもない。