百万のマルコ
『百万のマルコ』
柳 広司
集英社文庫
舞台は13世紀末のイタリア・ジェノバの牢。罪を犯したわけではないけれど、ただ争いに負けた側の船に乗っていたというだけで収監され、重要人物でもなければ、多額の保釈金が払える当てもないためにいつ解放されるかわからない5人の囚徒。そこへ新たに収監されたのは自らを”イル・ミリオーネ”(ほら吹き)と名乗る襤褸をまとった小柄な男。彼は囚徒たちを「ここから連れ出してあげよう」と、これまで経験してきた東の大国での冒険譚を語りだす。確かにそれらの話は囚徒たちをしばし”退屈”から連れ出してくれるような奇想天外な物語…。
「イル・ミリオーネ」マルコの語る話は本当の話なのか、ほら話なのか?とんち話のような展開で、なるほどなあ、と思ったり、そりゃないでしょ、と苦笑いな感じもあったり。ちょっと血なまぐさかったり、教訓めいたものもあるけれど、短編が13話なので読みやすい。
最後、おお、そうなるか!という締めも良かった。
果たしてマルコの話は本物?それとも法螺話?