十角館の殺人

『十角館の殺人<新装改訂版>』
綾辻 行人
講談社文庫
 綾辻作品で高校生の頃同級生に借りて読んだものがあって、それがこれじゃなかったかな、と思って読んでみたが違ったっぽい。
30年以上前に書かれた綾辻氏のデビュー作。なるほど、大学生の雰囲気もなんとなく感じる作中の雰囲気もちょっと時代が前な印象。読んでいて頭に浮かぶのはデジタル映像ではなく8ミリフィルム。
とある大学のミステリ研究会の7名が、今は無人となっているいわくつきの孤島を訪れ殺人事件に巻き込まれる。巻き込まれるというか当事者になるのだけれど…。仲間がひとりまたひとりと姿なき殺人者によって消されていく感じはなかなか怖い。描写も時にグロテスクだし。
島に乗り込んだ大学生7人の本名は最後の方まで明かされず、サークル内でのニックネームで描かれるので、なんだか人物像が把握しにくかった。それもロジックのひとつなのだが。ちゃんと”犯人”によって自分語りという形だけど動機や謎解きをしてくれるのでありがたい。そういうことか、と再読したくなる。