神様の罠

『神様の罠』
文春文庫
 ミステリー短編アンソロジー。
「夫の余命」乾くるみ/「崖の下」米澤穂信/「投了図」芦沢央/「孤独な容疑者」大山誠一郎/「推理研VSパズル研」有栖川有栖/「2020年のロマンス詐欺」辻村深月/
こういうアンソロジーだと面白いと思う作品があればあまり好みじゃないな、という作品もあったりして当たりはずれがあるという印象なのだが、この短編集はわりと「当たり」だと思った。
もちろん、個人的に面白いなと感じた作品ばかりだったということだけど。コロナ禍を背景に扱った作品もあり、”ああこういう風に反映されていくんだな…”とちょっとチクッと刺さった。
「夫の余命」は人物ロジックというか、ラストは多少ファンタジー。「崖の下」や「孤独な容疑者」はミステリーらしいミステリー。「投了図」「2020年のロマンス詐欺」はまさにコロナ禍の当世を反映したような話。「推理研VSパスル研」はもっとも気楽に読めた娯楽作品といったところ。好みとしては「推理研VSパズル研」が単純にありえない設定をどう考えるかを”推理”する感じが面白かった。血なまぐささとか全然なくて。逆に「2020年ロマンス詐欺」はなんともありそうでちょっと辛くなった。ラストは前途が明るい兆しが見えたから良かったけれど。ただ2023年になってやっと…ということを知っているとハッピーエンドと言い切れないところがもやもやする原因かも。