Klara and the Sun

『クララとお日さま』(『Klara and the Sun』)
カズオ イシグロ:著 土屋 政雄:訳
 タイトルも童話のような雰囲気がすると思ったが、クララという人工知能が搭載されたロボットの1人称で語られる物語はやはりどこか童話のような優しげな雰囲気がした。クララは子供の成長を助ける「AF」=人工親友として開発されたロボットであり、エネルギー源は太陽光らしい。すでに賢い人工知能を搭載されているがさらに見ること経験することから多くを学び察知し人の感情を読み取ろうとしている。特にジョジーという少女のAFになってからは、彼女や彼女の母親の望む役割を全うしようとしていて一途なその姿勢はいじらしい。
クララの独り語りという体裁で進む物語だが、そこから読み取れる登場人物たちの状況やとりまく世界観はけっして明るいだけではなくむしろ暗く苦しい印象も見え隠れし、AIやロボットと人という構図の物語としてだけでなく、人間の社会について考えさせられる内容が詰まっている、そんな気がした。