シーソーモンスター

『シーソーモンスター』
伊坂 幸太郎
中公文庫
 昭和後期、世の中は後にバブル景気とよばれる好景気に沸く中、北山家では嫁姑問題が勃発していた。同居に前向きだったはずの妻と母親は何故かそりが合わないようで、製薬会社の営業をしている直人はまさに板挟みで胃の痛い日々…。頼れる先輩になぐさめられ、ひょんなことから大病院の担当をまかさせるようになったものの、どうもその病院には裏がありそうで。舞台は変わり近未来。自動運転の自動車が普及し始めたが自動運転中の事故により家族を失った水戸と檜山。因縁めいた二人の運命が社会人となって再び交錯する。
 関係ないようでいて、関連しているふたつのストーリー。交われば反発してしまう海族と山族の対立の構図。争うことや壊すことで新しい何かが生まれ前に進む、確かにそういう面もあるかもしれないけれど、争いごとはないに越したことはないと思う。発達し過ぎた未来において、アナログが見直されている、という設定も妙に納得してしまった。
「螺旋」という企画ものから生まれた作品で、他に数名の作家さんたちも参加している企画。とはいえ単品で読んでも問題なく楽しめた。他の作品も気にならなくはないけれど…。